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「ハンバーグを食べに来たら、凄い大事そうなミーティングが始まりました(笑)」
内定者時代を振り返りながら楽しそうに話してくれたのは、AIシステム部の大西克典。
「ミーティングがあるとは聞いていたんですけど、ランチ食べて近況を簡単にヒアリングされるだけだと思っていました。ハンバーグ食べ終わって、会議室のドアを開けたらモニターの向こうに岡村さん(横浜DeNAベイスターズ代表取締役社長)と壁谷さん(同チーム戦略部部長)がいたんです。びっくりしていたら、AI×野球のプロジェクトをやろうかという話が始まりました。後から、自分の入社が決まったからプロジェクトも動き出したと聞きました」
こうして始まったAI×野球プロジェクト。入社後、データをもらった彼は解析を進め、さまざまな提案をするが、徐々に雲行きが怪しくなっていったという。
「自信を持ってアイデアを出すんですが、“研究”は求めていない、とフィードバックされる日が続きました。僕の中では実用に近いものだと思っていたんですが、会社が考える“開発”とは違っていて、そこのギャップに苦しみました」
具体的にどういったすれ違いが起きていたのだろうか。
「次の球はカーブが来ます、というような配球予測提案をしたのですが、実際だと使えないんです。なぜなら、まず1球単位で予測ができてもバッターが覚えられないし、そもそも情報として提供できないので※。“開発”ってこういうことなんだなと感じました」
※リアルタイムのデータの提供は、NPBの規約上違反となる。
ギャップはあったがベイスターズのアナリストなど現場にいるメンバーからサポートをもらい、議論を重ねて何が使えるのか“開発”の視点を身につけていった。それでも、経営陣への計画提案の際は緊張したという。
「僕の中では、実用できるものだと思って提案を準備したのですが、具体的にどんな数字でどれくらいの効果があるか説明してって言われたら、説得し切る自信はありませんでした。でも、岡村さんがやるなら細々と進めるんじゃなく、一気にやってみて、それでダメならダメで諦めて、いけそうならどんどんやっていこう!と言ってくれました。とにかくやること自体に価値を感じて、入社2カ月の僕に数千万規模のプロジェクトを任せてくれたのが嬉しかったです」
無事にスタートをきったAI×野球プロジェクトだが、実際に進めていくうちに見えていなかった壁と対峙することがあり、最初の頃はそれが辛かったという。
「例えば、コストとか工数っていう概念です。専門のエンジニアを入れた方が工数が短くなる、だから全部自分でやらなくて良いと言われたり、逆に人をたくさん動かすとなるとそれだけ費用がかかると言われたりもしました。研究していた時はそういった概念はなかったので、最初にフィードバックをもらった時は驚くとともに、ビジネスである“開発”の面白さだと思いました」
話を聞いていると彼の業務は、一般的にイメージされるAIエンジニアではなく、プロダクトマネージャーの役割にまで及んでいる。AIエンジニアの範囲外の業務を任されることに抵抗はなかったのだろうか。
「まず、技術研究が大事なんじゃなくてサービスとして届けることが大事っていう考えが根底にあります。あとは、絶対にプロジェクトを失敗させたくないという想いがありました。生粋のベイスターズファンの自分にとってこれが人生で一番やりたいプロジェクトなのに、これがこけたら僕は何をすればいいんだ?って。だから、AIエンジニアとしての仕事じゃなくても、泥臭くてもやるっていう考えしかなかったです」
夢中で進めたプロジェクトは、開発を始めた約4カ月後には、プロトタイプをリリース。今年、3年目を迎えた。
「今は、最初のプロダクトは運用フェーズに入ったんですが、昨年開発した2つ目のプロダクトの試験運用がこれから始まるので、そこも同時並行で進めています。よくわき見して、あれもこれもと違うところに色気を出しそうになることもあるんですけど、そういう時は、価値提供に集中することに立ち返って軌道修正。最短で現場に貢献することを意識します」
「プロジェクトのゴールは、ベイスターズが強くなること、すなわちベイスターズの優勝に貢献することです。先進的なことをやっているとは思うんですけど、それでもまだチームの勝利に貢献するという壁は高いと感じています。でも、その壁を乗り越えた先にあるチームの勝利こそが目指しているところなので、壁があることには胸が高鳴ります。技術的に新しいことに挑戦し、さらにチームの勝利に貢献することを目指していますが、早くチームの一員として優勝に貢献できたと胸を張って言えるようになりたいです」
これだけを聞いても、研究と開発のギャップを乗り越えたことがよく分かるが、彼はこう続ける。
「課題もあります。最初につくったプロダクトがまだ自発的にはあまり使ってもらってないんです…。今は、球場に通って実際に使うところを見てもらいながら、どこが使いにくいのか何が必要なのかをヒアリングして、上手く運用させようとしています」
プロダクトを完成させて使える状態にするだけでは、実用とは言えない。このことからも、彼の思考が“開発”になったことが感じられる。
これを本人に伝えたところ
「DeNAって情熱を持って全力で取り組むことを冷めた目で見る人がいないし、熱意をまっすぐそのまま評価してもらえるカルチャーがあるんです。だから、ギャップを感じたり壁にぶつかっても、臆さずに挑戦できて、それが成長に繋がっているんじゃないかなって思います」
明日も球場には、PCを抱えてストレート勝負を続ける彼の姿があるだろう。
※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。
※一部、旧オフィスの写真が含まれます。
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